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スパーク8・新刊サンプル



スパークでの新刊
 ・駅組+アリスで吸血鬼パロの『吸血鬼のお気に入り』
 ・ダイミラ設定のグレアリで『SWEET TRICK and LITTLE TREAT』
のサンプルです。




吸血鬼のお気に入り

 薄暗い空が広がる時間帯。パタパタと可愛らしい足音を立てながら廊下を走る少女の姿がその屋敷にあった。
 自分の身長よりも少しだけ高い位置にあるドアノブを背伸びをしながら握り、そうっとドアを開ける。
 灯りが点いていなくても解るパンクテイストで統一された派手な部屋には少しばかり危険なものもあるが、触らなければ平気だともう覚えた少女はそれらを無視して真っ直ぐベッドに近づく。

「起きて~!! 時間だよ~!!」
 ベッドの真ん中で丸まって寝ている男の躰を揺さぶって起こそうとするが体格差と少女の弱い力では男はちっとも動かない。

「お・き・て!!」

 今度はさっきよりも大きく言いながら、ギュッと右手を力いっぱい握り締める。すると、

「ぎゃ~!!」

 部屋中に響くほどの悲鳴を上げながら、男は飛び起きた。

「にゃっ!? にゃに!?」
「おはよう、ボリス」

 涙目で辺りを見渡す彼に、少女はニコリと微笑みかける。
 その手にピンクの毛色をした尻尾を握り締めたままで。

「お、おはようアリス……頼むからもうちょっと、優しい起こし方してくれない? 痛いよ」
「だって、ボリス起きてくれないんだもん! ……でも、ごめんなさい?」

 そう言ってベッドに上がると、アリスと呼ばれた少女は尻尾と同じピンク色の彼の髪を撫でる。

「うん。まあ起きなかった俺も悪いか……けど、明日から尻尾は無し!」
「解った!」
「先に言っておくけど、耳も無しだからな?」
「は~い!」

 元気良く返事をしたアリスの手がちょうどその耳に触れる。猫のそれと同じ彼の耳に。

「さてと、俺はこれから着替えるから……アリスは夢魔さんのとこ行ってくれるか?」
「うん!!」

 そうしてまたパタパタという足音を立てて部屋を出て行くアリスを見届けると、ボリスは大きく伸びをしてベッドから離れる。

「さて、今日は何を作るかな~」


        ○●○●○●


「ナイトメア~いる?」

 この屋敷に住む二人目はまず部屋にいるかどうかも怪しい。ボリスに夢魔さんと呼ばれている彼はその名の通りに夢を操る事が出来る。しかも躰ごと夢の中に入れるのだ。とある理由から脱走癖のある彼はしょっちゅうその方法で逃げている。
「あ、いた!」

 けれど今日は普通に寝ていてくれた。

「ナイトメア!! 起きて~!!」
「んん~あと、五分~」

 なんともベタベタな寝言を吐くが、そんな事で許すアリスではない。

「起きなきゃダメ!!」

 アリスは、両手でナイトメアのかけている毛布を握ると勢いよく自分の躰の方へ引く。

「っ!? さ、寒い!!」

 瞼を閉じたままで必死に腕を伸ばして毛布探すが、すでにアリスの足元に全て落ちているのでナイトメアに届くわけがない。

「ナイトメア! 起きて!! 起きる時間だよ」
「ううう。私はまだ寝ていたい」
「ダメ! ご飯はみんなで一緒に食べるの!」

 諦めて瞼を開けると、そこにはもう見慣れたアリスの姿がある。
「君は今日も、元気だな」
「うん! 元気だよ!!」

 起こされるたびにこのテンションの高さには吃驚するが、それまでの数時間を一人で過ごしているのだから、誰かと話せて嬉しいのだろう。
 夢を操るのと同時に他人の心を読める能力を持っている彼には、やっと起きてくれたと嬉しそうなアリスの声が聞こえてくる。

「あ、そうだ。ナイトメアにかりた本読み終わったよ。面白かった」
「そうか、じゃあ後で続きの本を置いておくよ」
「うん!!」

 そう言いながらアリスの頭を撫でると彼女は本当に嬉しそうな笑顔を見せた。

「今日は、私で最後なのか?」
「っ! ううん。グレイがまだなの…………ねえナイトメア?」
「何だい?」
「グレイのお部屋、今日は一人だけ?」
「ああ。大丈夫だよ。だからチェシャ猫も君に起こすようにと頼んだんだろう?」
「そっか! じゃあ起こしてくるね! ナイトメア、また眠っちゃダメだよ?」
「ああ解っているよ」

 来た頃よりは少しだけ年を重ねたが、それでもまだナイトメアの見た目よりも幼い女の子だ。それなのにどこか姉の様に振舞うのは年頃のせいだろうか、それとも元々こんな風に世話焼きな子供だったのか。
 彼女自身が覚えていない以上誰にも解らないが、アリスが楽しく日々を過ごせているのならいいか、とナイトメアは言われた通りに起き上がった。


        ○●○●○●


 今までの二部屋は遠慮無くドアを開けていたアリスだが、毎日この部屋だけは緊張する。
 さっきナイトメアから一人で寝ていると聞いているのに、躊躇ってしまったアリスは、まずドアをノックしてみる事にした。
 コンコンと二回叩くとすぐに向こうから反応があった。

「なんだ?」
「え、えっと……開けてもいい?」
「ちょっと待て」

 ドアの向こうから聞こえた声はさっきよりも近くなった気がした。
 そして次にアリスが声を発するより先に内側からドアが開けられる。そのわずかな隙間から覗いた顔はまだ寝起きのように見えた。

「おはよう、グレイ」
「ああ……猫にはもう少し待てって言っとけ」
「あ――」

 それだけ言うとグレイはドアを閉じてしまった。
 部屋の中に入れなかったせいで、このドアの向こうにいるのがグレイだけなのか、それとも違うのか解らない。けれど、怒られなかっただけマシだとアリスは切り替えてキッチンへと向かった。


SWEET TRICK and LITTLE TREAT

 もうすっかり歩き慣れたはずの道なのに、視線の高さが少し変わるだけでこんなに新鮮な気持ちになれるのかと、アリスは感心しながら歩を進める。

「大丈夫ですか~?」

 隣を歩く帽子屋屋敷の構成員の一人である彼にそう聞かれるのはもう何度目になるか。

「大丈夫よ。ごめんなさい、こんなにゆっくりでしか歩けなくて」
「気にしていません~それよりも、しっかり掴まってくださいね~」

 駅の領土内に入ったとたんに人が増えたせいで、ただでさえ覚束なかったアリスの足元は更に危なっかしいものになる。

「ありがとう」

 彼の言葉に甘えて、アリスは腕に触れていた手に少しだけ力を込める。すると顔が見えないはずの彼の表情が少しだけ柔らかくなったように感じた。

「どうかしましたか~?」
「な、なんでもないわ」

 思わず視線を逸らすと、お店のガラス戸に自分達の姿が写っているのが見えた。

(別人みたい……)

 髪はアップに纏められていつものリボンは着けていない。普段は着ないタイプの服。そしてヒールの高い靴のせいでこうやって支えられないとすぐに転んでしまいそうで怖い。

(何度見ても、別人だわ)

 帽子屋領土で見立てて貰ったこの服は、きっと普段のアリスならば大人っぽ過ぎて似合っていなかっただろう。けれど、今は少しの違和感程度でおさまっていると思う。

(大人の女性とまでは言えないけど……)

 小さな好奇心と、子供の悪戯心がこんな事になるなんてアリスは想像もしていなかった――


        ○●○●○●


「どうかしましたか?」

 それを困っている様子だと思ったらしい一人がアリスに声をかけてきた。

「いえ、何でもないんで……す」

 てっきり駅員姿の同僚だと思い込んでいたアリスは、顔を上げて驚きのあまり固まってしまった。
 目の前にいたのはグレイだった。あの見慣れたスーツ姿でいるので仕事中なのだろう。だからこそ基本的にナイトメアの傍にいるはずの彼が今この場にいるのがおかしい。

(また逃げ出したのかしら?)

 グレイが正式に側近になってから脱走回数が明らかに増えた駅長の姿を思い浮かべる。

「あの?」
「あ、いえすみません。何でもないんです」

 とっさに声色を変え、いつもよりも高めのトーンで答える。彼の態度は明らかに一般客に対するものだ。ここでアリスだと気づかれるのは恥ずかしい。

「え、えっと……人と待ち合わせをしていて。どのあたりにいれば他の方の邪魔にならないだろうかと、考えてしまって」
「ああ……それでしたら、こちらへどうぞ? 列車が到着するまでの待合室がありますから、ご案内致します」

 どうぞと言いながら差し出された手に触れるのを一瞬躊躇ったアリスだが、そこで断るのは不自然だろうと礼を言いつつ彼の手を取った。

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