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 『靴を失くしたドロシー』
 クローバーの国設定
 グレイ×アリス
 ハトアリ(アニアリ以降追加されてる)ナイトメアBADからの話です。




「君は、グレイに懐いているな?」

 宛がわれた客室で外出の準備をしていたアリスは強制的に夢の空間に連れて来られた。
 とはいえそんなことはもう日常茶飯事なので今更驚いてもいられない。

「どういう意味? というか、なんでわざわざこっちに連れて来たのよ。今は同じ所にいるんだから用事があるのなら普通に部屋に来ればいいじゃない」
「君と二人きりで話がしたかったんだよ」
「……サボってる途中ではなくて?」
「い、今はちゃんとした休憩中だ!! というか君、普通はこういうことを言われたらときめくものではないのか!?」
「生憎とあなたの言動にときめく要素なんて一切無いし、そもそも私がそんな態度を取るように見えるの?」
「…………見えないな……君は本当に年頃の女の子なのか? 君くらいの年齢ならば恋の一つや二つしていてもおかしくないだろうに」
「そういうのに興味が無いのも、あなたは知ってるはずでしょう」

 恋なんて、誰かを好きになるなんて二度としない。
 どうせいつかは終わるのだから。
 誰だって、アリスでは無い〈誰か〉を選ぶんだから……。

「そうだったね……だが、それはそれとしてグレイとはなかなかに良い雰囲気だと思うぞ?」
「ただグレイの面倒見が良いだけでしょう。今だって、街の案内をしてくれるくらいだし…………ってそうよ! 約束をしているんだから早く戻してちょうだい!」
「ああ、そうだったね。行っておいでアリス」

 結局何がしたかったのか、すぐに元の客室に戻されたアリスは急いでグレイが待っている塔の入り口へと向かった。

(懐いているなんて……猫じゃないんだから……)


        ○●○●○●


 ナイトメアの言ったことなど気にしないと思ってはいたのだが、あのタイミングで言われて意識しないわけがない。
 隣で丁寧に案内をしてくれているグレイの言葉も半分は裏の空で聞き流してしまうくらいには、先ほどのことを引きずってしまっている。

「アリス? どうかしたのか?」

 そしてそれはすぐにグレイに気付かれてしまった。

「っ!! ご、ごめんなさい! せっかく休憩時間を使ってくれてるのに……」
「いや、それはいいんだが。歩き疲れたのなら何処で休むか? 君ぐらいの年齢の子が好みそうな場所などは詳しくは無いが、喫茶店ならばよく行くところがあるんだ」
「ううん。大丈夫よ。本当にごめんなさい……待ち合わせ前にナイトメアに言われたことがちょっと気になって……」
「ナイトメア様? 君の所へ行っていたのか?」
「ええ……あ、もしかして脱走してる最中だったの? だったら今すぐ戻って捕まえて――」
「ちゃんとした休憩だから大丈夫だよ。現に俺もこうやって君と出掛けているだろう?」
「そうね、そうよね。良かったわ……あの人は前科がありすぎるから……」
「……君は優しい子だな、アリス」
「は!? 何言ってるのよ!! 優しいのはあなたの方じゃない。あんな駄目過ぎる上司の面倒を看てるし、こんな風に私の為に大事な休憩時間を使ってるし。あなたは優しくて面倒見が良すぎるわ」
「面倒見が良い……初めて言われたな。君にはそういう風に見えているのか?」
「ええ。夢の空間にいた私を気遣って此処に連れて来てくれた時から思ってたわ。この世界の人とは思えないくらいに優しくて、誠実そうで、面倒見が良い。だから、絶対に裏があるとも思ったくらいよ」
「裏?」
「そう。実はものすごく悪い人だったり、腹黒かったり。むしろそうでなきゃおかしいわ! なんて思い込んでたくらいよ。誠実過ぎて綺麗な人なんて気味が悪いから…………って本人を前にして失礼なことを言い過ぎね、ごめんなさい」
「さっきから謝ってばかりだな。だが、そんなに過大評価されるとくすぐったいな」

 照れ臭く微笑む表情からも良い人そうなオーラが見える。
 よく考えればナイフを装備している男性なんて危険としか思えないはずなのだが、武器所持が当たり前の世界の住人なのでそこはもうアリスの中で何も気にならないようになっている。

(慣れって怖いわ……)

 それにまだ知り合って間もないとはいえその武器を使用する場面をまだ見ていないのも安心する要因の一つになっているだろう。
 まったく使うことがないとは思っていない。
 領土争いが常にある上に、会合期間は住人達の殆どがこの塔の領土内に滞在することになっている。
 これで問題が起こらないはずが無い。だから、そういった問題が発生した場合にはグレイだってそのナイフを抜くのだろう。

(でもそれは仕事だから。私利私欲の為とか、誰かを傷つけたいからではないはず)

 こうやって考えるあたりがアリスの中でのグレイの評価がとても高い証拠だ。

(ああ、だから懐いているなんて言うのかしら)

 アリスにとってのグレイは安心出来る存在だ。そうそれは確かだし、素直に認められる。

(でもあまり親しくなったら駄目ね……私は帰らなきゃいけないんだから……)

 このひと時は限られたものなんだからと自分に言い聞かせる。
 そして、わずかに浮き上がりかけた気持ちをまた奥底に沈め直す。

(二度目は無いから……)

「アリス? そろそろ行こうか?」
「ええ。そういえば大通りって言うのはこの辺りのことなの?」
「ああ、一番店が多く並ぶし一般の人間も多い。なるべく裏通りには行かないようにしてくれ。何があるか解らないからな」
「はーい」

 そしてまた並んで歩き始める。

(今を楽しいと思うなんて、いけないと解ってる……でも少しだけ……)

 今はまだ会えない人への懺悔を心の中で唱えながら――

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