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初恋を実らせる方法 4



 グレイ×アリス
 フォロワーさんからのリクエスト(グレアリ・幼馴染パロ)の4話目(最終話)です





Gray side
 どういう経緯でこうなったのか…。
 主であるナイトメアに料理をさせる訳にはいかないので、必然的に自分が作る事になり、新鮮な野菜を探していた。
 そんな自分を見つめる視線に気付いて顔を上げると懐かしい人物がいて、自然と料理をするという話になり、それならば昔使っていた本をあげるという厚意に甘え、貰う事になった。
 そこまでは良い。だが、それを届けてくれる相手に問題があった。

「そうだわ!今度の日曜なんてどうかしら?その日ならアリスもお家に居るだろうから、あの子に届けて貰いましょう」

 その名前が出た瞬間にグレイの思考は止まり、断る間もなく話はまとまってしまった。
 そして約束の日曜日。まず真っ先にグレイがした事は、同居人を外出させる事だった。

「ほ、本当に出掛けていいのか!?」
「ええ構いませんよ、この辺りを見て回りと仰っていたでしょう?」
「ああ言ったとも…だ、だか…」
「残っている仕事に関しては、今夜にも片付けて貰えれば問題はありません。ただし別の護衛は付けますからね?」

 本来ならば従者である自分が行くのが当然なのだろうが、今日の目的はこの家を自分以外が居ない状態にする事だ。
 代わりに付く人間にもすでに話し了承済みで、嬉々として出掛けていく主を見送るとグレイは大きな溜息を一つ吐いた。

「ああ、もう逃げられないな」

 二人きりになりたいという訳ではないが、あの人が居ては余計の事を話されてしまう危険性があった。それを避ける為には仕方の無い事だ。
 そう心の中で言い訳をした。

「時間は、お昼過ぎくらいでいいかしら?」

 ロリーナの言葉通り、12時を少し過ぎた頃に来客を知らせる鈴の音が部屋に響いた。

「こ、こんにちは…グ、グレイお兄ちゃん」

 こないだの制服姿とは違い、どこか大人びて見える少女が目の前に立っていた。
 リビングまで案内し、飲み物を用意するためにキッチンに入ったところでこの家にはコーヒーしか無かった事に気付く。
 仕方なくコーヒーを淹れアリスに渡す、砂糖とミルクはいるだろうか?と聞けば、彼女は大丈夫だと答えた。
 しかし、その動作が少しだけぎこちないのにやはり取りに行こうかとも思ったが

「美味しい…」

 の一言が聞けホッとする。自分もカップに口を付けると、そんな自分をジッと見つめるアリスの視線に気付く。

「どうかしたか?」
「え!?ううん。なんでもないです!!あ、これ姉さんから預かってきた本です!!」
「ありがとう」

 アリスが差し出した紙袋はずしりと重かった。中を見ればレシピ本が五冊…そのどれもが簡単・初心者という単語が書かれているタイトルだった。
 その中でも特に気になったのは、表紙に色とりどりの野菜の写真が使われている本。
 中を見れば、メインが野菜のレシピばかりが書かれていた。

「ああ、これならあの方も食べられそうだ」
「あの方?」
「ん?アリスも一度会った事があるだろう?俺の同居人で…主でもある人だ」
「会った事…?」
「この間だよ…覚えていないか?」
「…あの人と一緒に住んでいるの?」
「そうだよ。今日は出掛けているから居ないが」

 ナイトメアと自分の関係をアリスに説明する。それは同時にあの日、突然彼女の前から離れた理由の一つを告白するという意味もあった。
 二十歳になったら、彼の従者として仕えると決まっていた事。だからナイトメアの通う学校への転入を決め家を出て行ったと。
 全てを話す事は出来ない、だが話した事に嘘は無かった。
 彼女への気持ちを自覚する前から言い出せなかったのは確かで、その理由は『悲しませたくないから』だった。

「そっか…そうだったんだ…」

 その瞬間にアリスの緊張が解けていくのが見えた。
 ホッとした表情でカップに手を伸ばす、両手で持つその仕草は子供の時と変わっていない。
 でも、その手に見慣れぬものを見つけてしまった。
 赤い薔薇の飾りが付いた指輪…それがアリスの左手薬指で光っていた。

「どうかしたの?お兄ちゃん」
「いや…アリスもそういうのを身に着ける様になったんだな…と思ってな」
「これのこと?こ、これはね…学校の先輩に、も…貰ったの。私には、似合ってないよね…」

 顔を赤らめ、右手で飾りを包み込むように握り締める。その不安げな目を見てしまっては

「似合っているよ」

 そう言うしかない。いや似合っている事は事実だ、ただグレイの中のアリス像にはいささか違和感があるだけのこと。
 指輪と言っても宝石店で買うような高価なものには見えない。硝子製の薔薇の飾りと細い銀色のリングで、それだけを見ればアリスが自分で買ったと言ってもおかしくない。
 でも、彼女が身に着けているものは他人からのプレゼントで、しかもそれを左手の薬指にはめている。
 真似事だとしても、その場所に合う指輪を贈る様な存在がアリスに居るという事だ。
 その瞬間にグレイの目には、アリスが『少女』ではなく一人の『女性』に見えた。
 年齢差は一生変わることなどない。それでも今は…今ならば手を伸ばしても許されるのだろうか?

(もう、遅いのか…)


Alice side
 会った事がある人だと言われた時、心臓が止まってしまうかと思った。
 真っ先に思い浮かんだはあの女の人。でも、あの時自分が見ていた事をグレイは知らないはずだ。

「会った事…?」

 上擦った声に自分の動揺具合が見えた。

「この間だよ…覚えていないか?」

 恥ずかしくて下を向いてしまったアリスだが、その意外な言葉にパッとグレイの顔を見る。
 この間…それは再会したあの日の事で、あの時グレイと一緒に居たのは男の人だった。
 黒を基本としたスーツ姿はグレイと同じだったが、グレイのかっちりとした着こなしに対してその人は凝っているというか、お洒落(?)な印象があった。
 そしてそれよりも、彼の表情がとても青白く…このままこの人は倒れるんじゃないのか?と思ったのを覚えている。

「…あの人と一緒に住んでいるの?」
「そうだよ。今日は出掛けているから居ないが…」

 そこでアリスは初めて知った。
 彼が自分の前から消えた理由を。
 アリスが何かをしてしまったからではない、元から決められていた事。
 幼い頃に主従の契約を交わした相手がいたグレイ…その主がナイトメアという現在の同居人にあたる…は、その主が二十歳になったら彼に付き従うと決めていた。
 ただそれを守っただけ。
 でもそれをアリスに告げられなかったのは、彼女に理由があった。

「君を悲しませたくないと思ったんだ」
「私…の…せい?」
「いや、俺の勝手な気持ちだ。君が俺と離れる事を悲しいと思って…泣くと思ったんだ。ただそれを見たくなかっただけだ。ただのエゴだよ…結局、離れる事は変わりなく。むしろ君を傷つけただろうに」

 じゃあ、あの女の人は?とそう聞くために開きかけた口を閉じる。
 嫌われていなかったのだと解れば、それだけで良い。

「そっか…そうだったんだ…」

 ホッとした瞬間に喉の渇きを覚えたアリスはまたカップに手を伸ばす。さっきまで苦味を感じていたはずのコーヒーがとても美味しく感じる。
 ふとグレイがこっちを見ているのに気付いた。

「どうかしたの?お兄ちゃん」
「いや…アリスもそういうのを身に着ける様になったんだな…と思ってな」

 そういうの…というグレイの視線は、アリスの手元に向けられている。
 そこにはついさっき貰った指輪がある。

「これのこと?こ、これはね…学校の先輩に、も…貰ったの。私には、似合ってないよね…」


        ○●○●○●


 それは、グレイの住むアパートへ向かうまでの馬車の中での事。

「ふふふ。その服をわらわに買わせなかった罰じゃ。それからもう一つあるぞ…」

 そう言ってビバルディはアリスの手を取り、その手のひらに収まる程度の箱を乗せた。
 開けてごらん。という言葉に従い中を見ると、赤い薔薇が咲いていた。

「硝子の薔薇?…これ指輪?」

 硝子で出来た薔薇を取ると、台座の中に指輪のリング部分が隠れていた。

「手をお出し…おや?中指では少し小さいか…」

 まずビバルディが指輪を通したのは左手の中指だったが、第二間接まで通ったがすぐにつっかえてしまった。

「ふむ…ではこちらだな…ふふぴったりなようだな」
「ビ、ビバルディ?」

 次にビバルディが選んだのは左手の薬指。そこはすんなりと通ってしまった。

「こ、これどうしたの?」
「お前へのプレゼントに決まっているだろう?女が着飾るには洋服だけでは足りないであろう?お前はまだそんなに化粧をする必要もなさそうだからな。ならばこういったアクセサリーしかあるまい」

 それでも貰うわけにもいかず外そうとするが、その瞬間に馬車はグレイの住む家の前に止まってしまった。
 そしてあれよあれよと言う間に、馬車から降ろされてしまった。


        ○●○●○●


「似合っているよ」

 普段アクセサリーなど身に着けないアリスにとって、この指輪はきっと自分に似合ってないと思っていた。
 でも、そのグレイの一言に嬉しくなる。
 『大人』である彼の目に、自分は『子供』ではなく映っているようで。
 なにより、好きな人に褒められた事が嬉しい。
 昔慕っていた人。嫌われてしまったと思った人。再会し、今でも好きだと…そう思った人。
 不思議と今は、叶わなくても良いと思っている…こうして居られるのならばこのままで良いと。
 それでも「ずっと好きでした」と伝えたいと思う気持ちがあるのも事実で。
 いつか彼にこの想いを伝える事は出来るだろうか?

 たどたどしくはあったがその後も会話は弾み、いつの間にか日が傾きかけていた。

「あ…」
「そろそろ帰ったほうがいいだろう…送ろうか?」
「ううん。大丈夫よ、歩いて帰れるから」

 行きは馬車であっという間に来てしまった道だが、地図はまだちゃんと持っているので帰れるはずだろう。
 家の外まで送るよ…という言葉に甘え、二人で玄関へ向かう。
 先にアリスがリビングを出てしまったためそのまま歩いていく。後ろにグレイの視線を感じるのは不思議で、少し緊張してしまう。ほんの少しの距離が長く感じた。
 もうドアを開けるだけ、という所で振り返りグレイに声を掛けようとした。
 「さよなら」と言うべきなのか、「またね」と言ってしまっていいのか…一瞬だけ俯き悩んだ瞬間だった。

「えっ!?」

 突然左腕が引っ張られ、その次の瞬間にはアリスはグレイの腕の中にいた。


Gray side
 幼い頃の面影と、見たことも無い一面が混在する。
 戸惑う気持ちはあったがそれを隠し、離れていた数年の事を報告し合っている内にもう日が傾きかけていた。
 さすがにもう帰さないとまずいだろうと自分から促したが、それをすんなりと受け入れるアリスに寂しさを感じてしまった。
 もう今はお互いの家が見えるような距離には居ない。
 ここで彼女と別れてしまえば、もう会えないのではないか?そんな事まで考えてしまう。
 再会した時と同じだ。
 「さよなら」とも「またおいで」とも言えそうに無い自分に気付く。

「………」

 数歩先を歩くアリスの背中は、指輪を見つけた瞬間と同じように大人びて見えた。
 けれどそれと同時にグレイの脳裏に浮かぶのは、あの日の幼いアリス。

『グレイお兄ちゃん、だいすき!』

 無邪気に笑いかけてくれたあの日の笑顔。
 愛しさのあまり抱きしめたいと思ったあの…笑顔。
 あの時は止める事が出来たが、今度は無理だった。

「えっ!?」

 突然腕を引かれ驚くアリスを、自分の腕の中に閉じ込める。
 アリスから仄かに薔薇の香りがする事に気付いた。
 これもまた誰かから貰った香りなのだろうか?そう考えた瞬間に、抱きしめる腕に力が篭ってしまう。

「グ、グレイお兄ちゃん?」

 その声に我に返る。腕を離せば明らかに混乱しているアリスが自分を見上げる。
 そんな表情すら愛おしく、いっそ口付けてしまいたいと思う自分は、相当にイカれている。

「突然すまない…もう暗くなる、気をつけて帰りなさい」

 アリスから離れドアを開けるが、彼女はそこから動こうとしない。

「どうした?アリ…っ!?」

 アリスの名前を呼びきる前に、今度は彼女が動いた。
 気が付けばさっきと同じようにグレイとアリスの躰はぴったりとくっ付いていた。違う点と言えば、今度はアリスがグレイの背中に自分の手を回そうとしているという事。

「アリス?」
「す、好きでした…ずっと…」

 今にも消えてしまいそうなか細い声が聞こえた。それはあまりにも突然の言葉で、グレイは一瞬幻聴なのではないか?と思ってしまう。
 それくらいに、自分に都合の良すぎる言葉だった。

「好きだったの…」

 驚きのあまりに言葉を返せなかったグレイに、アリスはもう一度自分の気持ちを告げる。

「アリス?」
「小さいときから、ずっと好きでした…それで、あの…」

 背中に回そうと精一杯に伸ばしていた腕は段々と縮まり、彼女の手はいつの間にかスーツの胸元をギュッと握り締めていた。

「だが、その指輪は…」
「これは、学校の先輩に貰ったもの…女の先輩で。私とは正反対に大人っぽくて、綺麗で」

 今着ている服も彼女と一緒に買ったもの…そうアリスは言った。
 ついさっきまで男性から貰ったものなのだろうと勘違いしていた指輪は女性からの贈り物で、その理由は自分を会う為。
 しかも、アリスは好きだと告白までしてくれた。

(これは都合の良い夢なのだろうか?)

「アリス。一つ聞いても良いか?」
「何?」
「今は、俺の事をどう思っているんだ?さっきのは、過去形だっただろう?」
「す、好きじゃなきゃ抱きついたりしないわ!」

 少し怒りながらグレイを見上げる、その口唇に思わず触れていた。

「っ!?」
「ああ、夢じゃないんだな」

 触れた時の柔らかさと温もりは、夢でも感じた事が無いものだ。
 今、目の前にいるのは本物のアリスなのだと。
 突然の事で混乱しているアリスを今度はグレイの方から抱きしめる。

「ありがとう…俺も好きだよ」
「う…嘘!?」
「嘘ではないよ。本当の事さ…昔からずっと好きだったよ」

 信じていない様子のアリスに全てを話してしまおうか…もしもそれで幻滅されてしまったとしても。

「それでも君を逃がすことは出来ないな」

 心の中で呟くはずだった言葉は、声に出てしまっていた。

「どういう事?」
「………君を絶対に離さない。という意味だよ」

 ここが玄関だという事も忘れて、グレイはアリスを強く抱きしめる。
 もうすぐナイトメアが帰ってくる時間とか、そもそも夕方だからアリスを帰そうとしていた事とか頭の中では解っているのだが、それが行動と一致してくれない。

(仕方無いだろう…まるで、初恋が実った様なものなんだから)

 そう自分に言い訳をして今はただ、やっと手に入れる事の出来た温もりを存分に味わうことにした。
 それは、10年越しの恋が成就した瞬間だった。

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