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大人と子供の嘘



 グレイ×アリス
 幼馴染みパロ『初恋を実らせる方法』のその後です
 エイプリルフールネタ





「君の事は好きじゃない」
「私だって…グレイお兄ちゃんの事、何とも思っていないわ」

 数週間前に恋人同士になったはずの二人とは思えない会話。
 その切欠は今から数時間前にグレイの家にかかってきた電話から。

『借りていた本を返しに、今度遊びに行っても良い?』

 声だけでも緊張しているのが解る年下の恋人からのお誘い。
 そんな声を聞いたら、さっきまでのイラつきもどこかへ飛んで行ってしまった。

「アリス…今日は空いているか?」

 だからせっかく出来てしまった休みを有意義に過ごそうと恋人を自宅へと誘ったのだった。
 そもそも今日は世間一般では休日だが、グレイとその主であるナイトメアにとっては仕事日だった。
 ナイトメア自身もその事を解っていて、日付が変わってすぐの時にグレイに宣言した。

『私は、今日一日仕事をするぞ!!』

 朝も早めに起きてさくさくと仕事を片付けるぞ!と珍しい主の宣言にグレイは喜んで眠り、朝を迎えた。
 そして溜め込まれた書類を執務室に運び、ナイトメアの私室へ彼を起こしに向かったのだが…その部屋には、誰も居なかった。
 ナイトメアの普段着が無い事と、窓が開けられている事から彼が此処から逃げ出したのだろうと予測するのは簡単だった。
 深く溜め息を吐きながら開けっ放しの窓をしようとした時、テーブルの上に便箋が置かれている事に気付いた。

『ふっ今日はエイプリルフールだ!嘘を吐いて良い日なのだ!!そういう訳だから、私は今日は一日中部屋に篭って仕事をするぞ!!』

 それは殴り書きされたナイトメアの字だった。
 嘘…つまりは、今日は一日中外出して仕事をしない、という事なのだろう。
 その時のグレイを誰かに目撃されていたとしたら、その相手はきっと恐ろしさで脅え震えた事だろう。
 手紙を握り潰さん勢いで両手に持ち、遠い目をしながらただ「ははは」と笑い続けるグレイは、ただ恐ろしいの一言だった。
 その後、すぐにナイトメアの居場所を突き止める事が出来た。捕獲に行こうと自分も外出の準備をしていた時に、アリスからの電話が来たのだった。
 これまでの事を家にやって来たアリスに話すと、彼女は呆れた表情を見せた。

「そのナイトメアって人は…なんなの?」
「何って…一応は俺の主だよ。身分もある人なんだがな…サボり魔なんだよ」
「サボり魔って………でも、探しに行かなくて良かったの?今からでも間に合うなら行った方が良いんじゃないの?私は、本を返しに来ただけだし…」
「良いんだよ。一応あの方には気付かれないように護衛は付けさせているし………それともアリスは、俺と過ごすのは嫌なのか?」
「い、嫌じゃないわよ!!」

 良かった…と微笑むグレイに照れてしまったアリスは、それを誤魔化すように出来立てのココア入りのマグカップを手に取る。
 このカップも、そしてココアもアリスの為にグレイが用意したものだ。昔と変わらない味にホッとする。
 そのココアを飲み干したところで、アリスはグレイに一つ提案をした。

「ねえ、グレイお兄ちゃんも嘘を吐いてみない?」
「嘘を?」
「うん!エイプリルフールだから………宣言をしてから嘘を吐くって変だけど…」
「いや、それも面白そうだな…だが、嘘と言っても…」

 右手を握りそれを顎に当てながら考え込むグレイ。そんなに真剣に悩むことなのかしら?とアリスがジッと見つめていると

「俺は、君の事が好きじゃない」

 恋人であるアリスに向かって笑顔でそう言った。
 いきなりの事に言葉を失うアリス、その様子にグレイは慌てて弁解した。

「ああ済まない…嘘でも言うべき事ではなかったな…」

 向かい合わせに座っていたのを隣に移動し、済まないと謝りながらアリスの髪を撫でる。

「嘘…そっか………うん…」

 最初は言葉自体のショック、次に反対の意味を考えて照れてしまって言葉が出て来ない。
 それをグレイはただアリスがショックを受けているだけだと思っているようで謝りの言葉も、髪を撫でる手も止まらない。

「も、もう大丈夫…で、でもどうして嫌いって言わないの?す…きの逆って、嫌いでしょ?」
「例え嘘でも、アリスに嫌いなんて言いたくないからな」
「~~~!!」

 今度は完全に照れで言葉を失くしてしまった。

「俺ばかり嘘を吐くのは不公平だろう?アリスも何か言ってくれ」
「う………えっと…わ、私も!グレイお兄ちゃんの事なんて、好きじゃないわ!!」
「そうか…ありがとう」

 動揺してしまったアリスとは違って、最初からその意味をしっかりと理解しているグレイはにっこりとお礼を返すだけ。
 それを悔しいと思ったアリスは他にも思いつく限りの嘘を言っていく。

「グレイお兄ちゃんの事なんて、何とも思ってないから!」
「こないだ借りた本だって、面白くなったわ」
「本当は、ココアだって苦手だし…」

 嘘というよりは、思っている事とは真逆の事を言っているだけで、しかもグレイはそんなアリスの言葉に対してずっと笑顔で「そうか、ありがとう」と返すだけ。
 もう思いつくものも無くなったのだから諦めてしまえばいいのだが、最後に一つくらい…その時アリスはある事を思い出した。
 それは数日前の事。お昼休みに、クラスメート同士が話しているのをアリスは横で聞いていた。
 彼女たちの話題はエイプリルフールに恋人に吐く嘘について。好きな人が出来たとか、ラブレターを貰ったとか、告白されたとかどれを言えば相手が動揺するかを楽しそうに話していた。

「えっとね…わ、私…ラブレターを貰った…の…っ!?」

 彼女たちのアイディアをそのまま使ってしまった。するとさっきまでの笑顔とは違う反応が見られたが、それはアリスの狙いとは少し違うものだった。
 たしかにニコニコとしていたグレイの表情は一気に変わった。いや見た目だけで言ってしまえば笑顔のままなのだが、その目だけは全く笑っていない。
 それを一言で表すならば、恐ろしかった。

「誰に…貰ったんだ?」
「え…えっと…その…」

 じわじわと距離が縮まり、気が付けばアリスの躰はグレイの両腕に拘束されていた。

「言ってごらん?」
「………えっと…」

 グレイの変化に脅えてうまく言葉を返すことが出来ないアリス。

「えっと…あの…」
「…はは」
「え!?」

 そんなアリスを追い詰めるように見つめていたグレイの表情にまた変化が表れた…彼は笑っていた。

「え!?な、何!?」

 アリスの腰に回っていた腕は離れ、グレイは声を出して笑っている。

「はは、少しは驚いたか?」

 何が起きたのは全く理解出来ていなかったアリスだが、その一言でさっきまでのが振りだと気付いた。
 アリスの嘘を信じるという振り。これもある意味嘘を吐いていたという事になるだろう。
 結局は自分が騙されていた事が悔しいアリスはグレイを睨むが、頬を膨らませながらでは可愛いだけで、グレイには全く効き目が無かった。

「悪かった。機嫌を直してくれ?アリス」
「も~グレイお兄ちゃんを騙せると思ったのに~」
「十分、騙されたよ?最初は信じたさ…でも、アリスはきっと貰ったとしても隠し通すだろうなと思ったからな…だから、嘘だと気付いたんだ」

 たしかに、もしも今の…グレイと恋人同士という状態で他の人からラブレターを貰ったとしたら、アリスは迷わず断り、そしてそれを彼に話す事はないだろう。
 そんな自分の行動を理解してくれている事が嬉しくて、ちょっとだけ悔しい。

「騙すまではいかなくても、驚かせたかったのにな~」
「だから十分に驚いたさ…でも、俺を動揺させたいならたった一言だけで出来るさ」
「一言?」
「ああ。アリスが俺を嫌いと言えば、それが例え嘘だとしても俺は動揺して…取り乱すかもかもしれない」

 穏やかに微笑む彼が取り乱す様子…見たいと思うアリスだが、それは絶対に見る事は出来ないだろう。

「無理よ…私だって、嘘でも嫌いなんて…言いたくないもの」
「ありがとうアリス………ああでも、正直に言えば一つだけ君に対して嫌いな部分がある」
「えっ!?」

 穏やかな表情のまま言うので最初は自分の聞き間違いだと思った。でも彼は確かに「嫌いな部分がある」そう言った。
 それは何なのか聞きたい…直せるものなら直したい。でも、それがアリス自身に直す事が出来ない部分だったら…そう思うと怖くて聞けない。
 だけどグレイはそんなアリスに気付いていない様子でこう続けた。

「アリス…俺の事を呼んでごらん?」

 さっきの嫌いな部分とどう繋がるのは解らない。でもアリスは迷わず彼の事を呼んだ。

「グレイお兄ちゃん?」

 そういつもの呼び方で。とたんにグレイは再びアリスの腰に腕を回し、その距離を縮めた。

「それだよ…」

 縮まった距離とさっきとは違うグレイの雰囲気が気になって、彼が言っている事にまで意識が回っていかない。

「だから、その呼び方が嫌いなんだ」
「呼び…方?」

 出会った時から彼の事を『グレイお兄ちゃん』と呼び続けていた。再会した瞬間に変えてしまえば良かったのかもしれないが、思わず昔と同じ呼び方をしてしまっていた。
 正直、それ以外にどう呼んでいいのか解らなかった。

「でも…」
「名前で呼んでくれないか?」
「な、名前!?」
「ああ。呼ぶまでは離してやれないな」

 伸ばしきっていた肘が曲げられる距離まで詰めて来る。微かに吐息すら感じられる。

「~~~グレイ…さん?」
「違う…呼び捨てで…」

 いつもアリスに対しては甘いトーンのグレイだが、今の甘さは何かが違う。

「アリス?」

 彼が呼ぶ名前が、自分のものではない様に聞こえる。
 これ以上この声を聞いていたら、自分は駄目になりそうな気がして…早く解放される為にも、アリスは勇気を振り絞って彼の名前を呼んだ。

「グレイ…」
「ああ、よく出来ました」

 その言葉と共にチュッと音を立てた軽いキスがアリスに贈られる…軽いものとは言え、アリスにとっては二度目のキスだ。
 照れた顔を隠したいが、グレイとの距離はまだ近過ぎるままで…てっきり名前を呼べば離れるのだと思ったがその気配はない。

「今度から、そう呼んでくれ」
「う、嘘だよね?」
「呼んでくれないのなら、ペナルティを付けようか?ちゃんと呼ばなかったその度に………こうやってキスをしようか?」

 グレイの口唇が次に触れたのはアリスの額だった。

「だ、だから嘘だよね!?」

 さっきまでの照れと、どんどん増えていく要求に対する動揺で顔を真っ赤にするアリス。
 そんなアリスをジッと見つめていたグレイだが堪え切れなくなったようでさっきと同じ様に声を出して笑った。
 それでこれも嘘だと解り、ホッとしつつも怒るアリスだけど、その余裕もすぐに消えてしまう。

「ああ…本当はこっちだよ…」

 腰に回していた右腕を持ち上げ、その手でアリスの顎を微かに持ち上げる。その拍子に口唇に触れてしまった親指で、そのままスッと下口唇をなぞっていく。
 うっすらと塗った口紅がグレイの指に付いてしまったが、彼はそれを迷う事なく自らの舌で舐めとる。
 この一連の動作に見惚れ固まり、アリスは動けなかった。

「さぁ…俺の事を呼んでくれ?」

 だからその要求をすぐに叶える事は出来ず、それを咎める様に再び口唇が重なる。
 今度のキスは、リップノイズがする様な軽いものではなかった。

「っ……!?…んん…ぁ…」

 舌を絡められるキスに、アリスは呼吸の仕方を忘れる。口唇が離れ解放されるのかと思ったがすぐにそれは塞がれ、その瞬間に自分のものとは思えないような声が出てしまう。
 恥ずかしくて耳を塞ぎたいが、自分の腕なのに満足に動かす事が出来ない。
 せいぜいグレイの服にしがみ付くのが精一杯だった。

「アリス…」
「…っ…グレ…イ…」

 本当は恋人同士らしい名前の呼び方が出来て嬉しいと思っている。
 両想いになったとはいえ、幼い頃を知られている人で年も離れている彼に恋人として見て貰えているのか不安になる事も多い。
 だから例え背伸びをしている様に見えたとしても、彼の名前を呼び捨てで言える事が嬉しくて仕方ない。
 それを伝える事が出来たら、彼は喜んでくれるだろうか?
 そんな風に自信の無いアリスだから、きっとグレイの気持ちになんて気付けていない。
 グレイが必死に自分の気持ちに嘘を吐いて、アリスに接している事を。
 こんなものでは足りないくらいに、アリスを欲している事を。
 年の離れた恋人は、彼女が知らない嘘をいくつも抱えているのだ。

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secret

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急展開に思わず萌えてこっちに感想かいちゃった(*´∇`*)

エイプリルフールに乗っ取って名前呼ばせるグレイずるい///でも呼んでもらえなくて日頃もんもんしてたグレイの姿考えるともう(ゴロンゴロン

エイプリルフールネタ大変おいしかったです

こっちでもコメントありがとうございます!
エイプリルフールネタと、前から書きたかった名前呼びを混ぜたらこんな感じなりましたww

きっと『お兄ちゃん』と呼ばれるたびに罪悪感が生まれて手を出せなくて…ずっと名前で呼ばせる機会を窺っていたのですよwwでもこれですんなりアリスが呼べるようになるわけもないから…まぁそれを口実にキス出来るから…グレイにしてみればどっちでも有りなのかもww

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水青 奏

Author:水青 奏
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・SoundHorizon
・乙女ゲー
・文字書き

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