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Blau und Tranen 2



 グレイ×アリス
 赤ずきんパロの2話目です





 グレイ曰く、空き家だと思っていたという家に住む薬師は、アリスの予想とは違った人だった。

「ああよく来たな」

 アリスの予想では自分の父親…いや祖父くらいの年齢の人だったのだが、目の前にいるのはいっていたとしても三十歳くらいの若い青年だった。
 銀色の髪、それと同じ色の瞳。右目に眼帯をした男性。美形に位置するだろう容姿をしているが…それよりもアリスが気になったのは彼の青白い顔だった。

「だ、大丈夫ですか?顔色がとても悪そうですけど…」

 もしかしたら薬の調合で疲れてしまっているのだろうか?そう思って心配そうに聞いたアリスだが、

「大丈夫だよ…これはいつもの事だからね…ああ薬はもう完成しているよ」

(いつも??)

 いつも仕事に追われているからこんなに顔色が悪いのだろうか?
 この人は優秀な薬師なんだな~。なのにどうしてこんな危険な森の中に住んでいるんだろう?
 色々と訊ねたい事が出て来るが、今のアリスにはそんな事をしている余裕は無かった。

「ありがとうございます!あのこれ、預かってきました代金とワインです!パンはちょっと私の不手際で落としてしまって…ごめんなさい」
「いや…気にしないでくれ。店主にもありがとうと伝えておいてくれ?後は、お大事に…と」
「はい!!」

 バスケットの中身を入れ替え、ドアの前で深々と礼をするとアリスは家の外に出た。
 外はもう夕焼けが広がっていた。でもアリスが急いでいたのは日が沈んでしまうからではない、待たせてしまっている人がいるからだった。

「ご、ごめんなさい!!」
「そんなに待ってないから平気だ…もう用事は終わったのか?」
「は、はい!」

 外に出てすぐ、森と家の敷地の境界の様に生えている二本の木。その一本の幹に寄りかかっていたグレイは、アリスの姿を見つけると微かに微笑んだ。
 この家まで案内して貰いそこで別れるのだと思っていたアリス、だから彼が「俺は此処で待っていてやる」と言った時は自分の耳を疑った。
 そこまで迷惑はかけられないと断ったが、帰りはもう陽が沈む頃に加えてさっきと同じ道を通らなくてはいけない、さっきよりも危険な所を一人で歩かせるわけにはいかないと言われてしまったのだ。

「じゃあ戻るか?」
「ええ…でも本当に良いんですか?」
「気にしないでいいって言っただろう?ここまで来たらあんたがちゃんと町に帰るまで見てないと落ち着かないだけだ」
「ごめんなさい…迷惑をかけて」
「俺が勝手にやっている事だから気にするな…それよりも、これに懲りたらもう一人で森には入るなよ?」
「そ、そういうわけにはいきません!暫くはあの薬師さんの所へ通うのが私の仕事だから!!」
「だったらまた狼に遭ってもいいのか?」
「っ!?」

 その瞬間にアリスの脳裏に蘇るのはあの狼の姿。自分を睨み付ける瞳と鋭い牙………もう自分は死んでしまう、そう思った。
 それを考えると歩いていた足は止まり、躰が震える。

「ああ悪かった…余計な事を言ったな」

 ポンポンと頭を撫でられると震えも恐怖もどこかへ飛んでいってしまった。

「仕事だったら仕方ないが…せめて、誰かに着いてきて貰え?あんたの町にも居るだろ?そういう頼りになりそうな奴が…」

 頼りになりそうな人物…そう言われてアリスが思い描いたのは、同じ町に住む猟師ではなかった。
 そして思わず目の前の彼の服を掴んでいた。

「ん?なんだ?」
「あ…あの…お礼がしたいです!大した物は用意出来ないと思うけど…」
「礼?そんなものは…」
「でも!貴方が居なかったら私は今頃…」

 死んでしまっていった…そう言う事すら恐ろしくて言葉に詰まってしまう。
 グレイは困った様な表情で、もう一度アリスの頭に触れた。

「じゃあ…お言葉に甘えるよ」
「ありがとう!!隣町に住んでいるんですよね!?私届けに行って…」
「いや、俺がこっちに来るから………此処で待ち合わせっていうのはどうだ?」

 此処…二人が今立っているのは森の入り口。もうアリスの住む町も自分達の目で確認出来る場所だ。

「はい!じゃあちょうど一週間後に…良いですか?」
「ああ…昼ごろにはここに着くようにするから、あんたはちゃんと此処で待ってろよ?間違っても森の中には入るなよ?」

 その後もう一度念を押すように森には入るなよ?と言うとグレイは来た道を戻って行った。
 アリスはその姿が見えなくなるまでジッと見つめていた。
 猟師というわけではなさそうだが、狼をナイフ一本で追い払える実力を持った不思議な人。
 無愛想で怖いと感じる様な見た目なのに、面倒見が良い人。


        ○●○●○●


 薬屋の夫妻と姉のロリーナには、グレイの事を話した。
 狼に襲われた事だけは伏せて、ただ森で知り合って危ないからと道案内をして貰った上に帰りも送ってくれた…とだけ。
 ロリーナには、彼にお礼したいからまた来週に会う約束をした事も言った。そして何をあげれば良いのか?という相談も。

「そうね…アリスはお菓子やパンを作るのが上手だから、なにか作って行ってあげたら良いんじゃないかしら?」

 そのアドバイスからアリスが選んだのは手作りのパンだった。お菓子を選ばなかったのは、グレイが甘いものが好きかどうか解らなかったから。
 それからアリスはバイトの時間以外はどんなパンを作ろうかと考えてばかり。その場で食べられる様な調理パンがいいのか、それともシンプルなパンの方がいいか?
 結局、悩んだ末に二種類とも作る事にした。
 調理パンは細かく刻んだ玉ねぎとベーコンを入れたもの、シンプルな方はほんのりと甘いミルクパン。
 少し多めに作り、薬屋の夫妻にも渡した。そしてその時に今週分の薬の代金を預かってきた。
 そしていつもの青い頭巾を被り、先週よりも一時間程早めにアリスは森の入り口へ向かった。

「来てくれるよね…」

 歩きながら次第に大きくなっていく不安。でもそれは入り口が見えた瞬間に綺麗に消えていく。
 そこにはすでに待ち人が来ていた。全身を黒で統一した服、青みかがった黒い髪、近づけばその金色の瞳も見えるだろう。
 アリスは思わず駆け出していた。

「グレイ!!」
「早かったな…」
「グレイの方こそ!」
「あんたが勝手に森に入らないようにな」

 あんなに念を押されたのだからちゃんと守るつもりだった。でもこれが心配してくれているからの行動だと思うと嬉しく感じる。

「それで、今日のあの家に行くんだろ?」
「ええでもその前に…これを受け取ってもらえますか?」

 アリスは両手で持っていてバスケットをそのままグレイの前に差し出す。
 言われるがまま受け取ったグレイは、そこから微かに美味しそうな匂いがする事に気付いた。上に被せられた布巾をめくると中にはパンが入っていた。触ればまだ温かさを感じる。

「これどうしたんだ?」
「わ、私が焼いたの…先週のお礼にと思って…こ、こんなのしか用意できなくてごめんなさい!!」

 グレイが助けてくれた事のお礼には釣り合わないと解っているが、自分が用意出来るのはこんなものしかなくて…。
 頭を下げながらそう続けたアリスの耳に、ガサガサという音が聞こえた。何の音だろうと頭をあげると今まさにグレイがパンに齧り付いている所だった。
 彼が選んだのはミルクパンの方。手のひらサイズのそれの半分程がグレイの口の中に消えていった。
 それを無言で咀嚼するグレイ。そして口に入れたものを綺麗に飲み込むと

「旨いな!」

 そう笑顔で言った。それは今までに見た困った様な笑みではない、初めて見る彼の笑顔だった。

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