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風音



 土方×千鶴
 SSL+転生パロ


 



 それは千鶴が高校生になって二度目の春の事。
 自分以外に女子生徒がいないという環境にも慣れて、それでも新一年生の中に女子生徒が居てくれるといいな…と考えてしまう春休みのある日の話。

「わぁ………」

 買い忘れたものがあったから出掛けてくると言って向かったコンビニからの帰り道。陽はすっかり沈んでしまっている。
 急いで帰らないと双子の兄が煩い…と解ってはいるのだが、千鶴の足は止まっていた。
 目の前には神社、そして満開の桜の樹が一本ある。

「綺麗………」

 いつも青空の下でしか見ていなかった桜の木。
 夜桜は、千鶴の目にはまるで違う花のように映っていた。
 気がつくと、彼女の足は桜の木の下へ向かっていた。
 この桜は枝葉が横に伸び、真下から見上げると空が桜で覆いつくされている様な感覚になる。
 花々の間から、月が見えた。
 その瞬間に大きく風が吹く。その風と共に花びらがはらはらと舞い上がり、ひらひらと地面に落ちていく。

「すごい…綺麗…」

 ふと風の音に混じって、誰かの声が聞こえた気がした。

 誰かが、「貴方には桜が似合う」と言う。
 誰かが、「お前は春の月のようだ」と言う。
 誰かがまた言う、「この世で一番美しいのは春の月だ」と。

「春の月…」

 桜の合間に見える月はたしかに美しい。
 でも千鶴はもっと美しいものを知っている気がした。
 そう、春の月が美しいと言った『その人』こそ最も美しいと…でもそれが誰かは解らない。

「雪村?」

 その声ははっきりと千鶴の耳に届いた。さっきの声とは違って聞き覚えある声。
 でも、どこか似ている声。
 その声の主は、土方だった。

「土方先生?」
「何してんだ?こんなところで」

 近づいてくる土方の表情は少し怒っているように見える。
 自分の学校の生徒が夜遅くに、しかも一人で出歩いているという事に対して怒っているのだろう。

「ご、ごめんなさい!!」

 だから千鶴は真っ先に謝罪の言葉を口にしていた。

「何に対してだ?」
「え…こ、こんな遅くに出歩いている事に対して…です」
「おお。解ってるならいい。ったくお前は一応は女なんだから、あまり遅くに一人で外に出るんじゃねぇぞ?」

 くしゃくしゃと頭を撫でる土方の手。その手の上にヒラヒラと花びらが一つ落ちてきた。
 それに気付いた彼は上を見上げた。

「まぁこんな桜見つけたら…眺めたくなる気持ちも解るがな…」

 そう言う彼の表情は穏やかで、どこか悲しげなものだった。
 だけどそれはとても美しく、まるで今この場が彼の為にあるような…そんな気さえした。

「先生は、桜が似合いますね?」
「っ!?どうしたいきなり」
「そのままの意味です。先生には桜が似合います」
「お前な、大人をからかうもんじゃねえぞ?」

 さっき程よりも強い力で撫でられ、髪はさらに乱れてしまう。

「な、何するんですか~!」
「ほら、とっと家へ帰れ。これ以上寄り道するんじゃねぇぞ?」
「わ、解ってます!土方先生、さようなら!!」

 そうして遠ざかっていく千鶴の背中を見つけながら土方は小さく呟いた。

「お前も似合うよ…千鶴…」

 遠い記憶の中で、桜が似合うと言ってくれた最愛の存在。
 今でも鮮明に蘇るあの光景を、再び二人で見たいとも思う。
 だが…このままでいいとも思ってしまう。
 あの少女が幸せに過ごしてくれるのならば、自分の…自分たちの事なんて思い出さなくても良いと。

「春の月か…」

 月が土方を優しく照らしていた。
 今のこの世でも、彼が最も美しいと思う春の月が。

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