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Blau und Tranen 5



 グレイ×アリス
 赤ずきんパロの5話目です
 診断メーカー部分は以上で終わりですが、この後どうにかハッピーエンドにもっていく予定です





 アリスの叫びと同時に放たれた弾は大きく逸れ樹の枝に当たった。
 怖くてきつく目を瞑っていたアリスはその撃ち落とされた枝の落ちる音で目を開けた。

「あっぶないじゃないか~アリス!」

 その台詞とは裏腹にちっとも焦っていない声が聞こえる。
 アリスはエースとグレイの間に位置するように立ち、その腕を大きく広げた。
 苦しそうなグレイの「どいてくれ」という声が聞こえたがアリスはそれを無視した。

「何のつもり?」
「この人を撃たないで!」
「え~?でもそいつは狼だよ?しかも普通の狼よりも性質が悪い存在なんだよ」
「そんな事ないわ!グレイは優しい人よ!私の事を助けてくれたし、それに…っ!?」

 これで四度目になる、銃口がグレイに向けられる…目の前にアリスが居るにも関わらず。

「狼は、全部狩らないといけない。特にこの森にいる狼はね…俺は町を守る猟師だからさ~。良い子だからどいてくれる?アリス」
「嫌よ!!なによ、ろくに町に居ないくせに!!この辺りの狼を追い払ってくれたのは彼かもしれないのよ?エース!!貴方は自分の代わりに町の人達を守ってくれた人をこ…殺す気なの!?」

 声も躰も恐怖で震える。それでもここから動くわけにはいかない。
 たとえエースが、『障害物』があろうとも『標的』を射抜ける腕前だと解っていても。

「ふ~ん………そっか…」

 ジッとアリスを見つめるエース。その視線から逃げてはいけないとアリスも見つめ返す。
 先に目を逸らしたのはエースの方だった。そしてそれと同時に銃も下ろす。

「エ、エース?」
「う~ん。そういう事なら仕方ないよね~。それにそこの狼はアリスの事も助けてくれたらしいからね~兄代わりとしてはお礼をしないといけないよね?」

 ついさっきまでグレイにしてきた事をあっさりと忘れたような言動に腹が立ちつつも、アリスはそれに合わせる。

「そんなのは必要ないわ。私がちゃんとお礼をしたから…そ、それでも何かしたいっていうのなら、今すぐ町に帰りなさいよ!私達の前から消える事が一番のお礼になるわ」

 意味の解らない事を言っている自覚はあるが、エースをこの場なら離れさせたい一心でアリスは続けた。
 エースもそれに合わせてくれたのか、本当に従っただけなのか、

「陽が暮れる前には帰っておいでよ?」

 と言い残して二人の前から離れていく。方向音痴の彼らしくその道は明らかに町に通じる道ではない…というか態々横に逸れた獣道を進んでいったが、アリスがそれを忠告する事
無かった。むしろ…

(暫くは顔なんて見たくないから、迷い続ければいいのよ!)

 とまで思っていた。そして森の草の間でもよく目立つ赤い服が完全に見えなくなると同時に、緊張と恐怖から解放されホッとしたせいか足に力が入らなくなり、へなへなと地面に座り込む。

(よ、良かった…)

 そのアリスを包むように黒い影が出来た。座り込んでしまったアリスとは対照的に立ち上がったグレイによって出来た影。
 肩と脇腹に傷を負いながらも彼は気丈に立ち上がり、そしてアリスをジッと見下ろしている。その頭には耳が見え、僅かながら尻尾も確認出来る。狼のものだと一目解るそれ…でもアリスには恐怖心は無かった。

「大丈夫?お医者様に見せないと…ここからなら貴方の町の方が近いわよね?それとも王都に行った方がいいかしら?あ!ナイトメアが傷薬持っているかもしれないわ!………グレイ?…っ!!」

 足に力が入らないせいで立ち上がることの出来ないアリスが色々と提案するが、グレイはそれをただ見つめたまま。その瞳を見つめ返した瞬間にアリスの全身に鳥肌が立った。

「どうしてあんな事をした」

 聞いたこともない低い声。自分を見下ろす視線はとても冷たい。それは何処かで見たことがある………彼と出会う切欠となったあの狼と同じ目、獣の瞳だ。

「私は…」
「俺がいつ助けてくれと言ったんだ?」
「…っ!!」

 それに気づいたとたんに震えるアリスは何も言えなくなる。そんな彼女を置いてグレイは歩き出そうとした。

「ま、待って!!」
「なんだ」
「私は…貴方の事が…」

 さっきと同じように途切れ途切れになる告白。好きだから助けたかった。貴方がどんな人でも、人間ではなくて好きな気持ちに変わりは無い…そう言うつもりだったでもその言葉は遮られる。

「お前が俺をどう思おうと勝手だが、誰が好きだと言った?」

 彼の、刃物のように鋭く冷たい言葉によって。

「え?」
「俺は別にお前が好きで構っていたわけじゃない。俺にとってのお前は獲物の一つだ」
「えも…の」
「この姿を見れば分かるだろう?俺は狼…まぁあの猟師の言う通り半分は人間の血が混じってるが、俺にとって人間なんていうのは獲物に過ぎない。ましてや若い女の味は格別だからな?」

 一度は離れたグレイがゆっくりとアリスに近づき、そして膝をついた。でもそれは苦しいからではなく彼女に触れる為…だけど、アリスはあの時と同じ様にその手を避けてしまった。
 けれどあの時と違うのはグレイの反応…彼は口元を歪ませ笑った。

「他の奴等を始末していたのは、獲物を横取りされない為だ。あと少しで、旨そうな人間が手に入ったんだけどな…あんな危険人間が後ろにいるんじゃ…諦めるしかなさそうだな」

 再び立ち上がり、アリスから離れていくグレイ。動けないアリスは彼を呼び止める事しかできない。

「待って!!!」
「もう二度と会わねぇから安心しろ。ついでにここらへんに他の狼もいないからな…じゃあな、青い頭巾のお嬢ちゃん」
「待ってグレイ!!…私は…グレイ!!」

 何度名前を呼んでも彼が振り返る事は無く、遠ざかる背中がどんどんぼやけて行く。ポロポロと流した涙が服に染み込み、濃い青が広がる。
 その時になって、彼に一度も名前を呼ばれていなかった事に気付く。

「私は…私として見てもらえてなかったの?…貴方が…好きなのに…どんな人でも好きなのに…」

 その声がグレイに届くことは無かった。

「全部…嘘なの?」

 アリスが好きだと思った笑顔も、優しさも全てが偽りだったのか…ただ『獲物』を確実に手に入れる為の芝居だったのか?
 これまでの優しい笑顔と、今見せた冷たい表情が脳裏でグルグルと回っていく。
 混乱するアリスの中に、狼としてのグレイに対する恐怖心はやはり無く、あるのはただ彼になんとも思われていなかったというショックのみ。

 フラフラと立ち上がり、アリスは来た道を戻っていく。彼の傷口を押さえていたハンカチを忘れてしまったと気付いたのは森を出てからの事だった。

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secret

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comment

はじめまして!

続きが凄く気になります(涙)
お願いします!
続きを・・・続きをお願いしますぅぅぅ!!

Re: はじめまして!


 遥那 様
はじめまして!赤頭巾パロを読んでいただきましてありがとうございます。
そ、そうですよあの終わり方で放置はないですよね…半年間更新無しとか( ̄□||||!!
オフ本のほうやダイアリ妄想ばかりですっかり…いえ続き(ハッピーエンド)にもっていく流れは出来ていますので、も、もう暫くお待ちください<m(__)m>

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水青 奏

Author:水青 奏
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・SOPHIA
・SoundHorizon
・乙女ゲー
・文字書き

初めましての方はまず
『始めに』をご覧ください。

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