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sugar chain



 グレイ×アリス
 クローバーの国のアリス設定
 『ゲームは楽しむ為にある』続き風
 フォロワーさんからのリクエスト





(君の事を厄介な性格だと言った事は撤回しよう。)

 ナイトメアは誰に聞かれるわけでもない心の声で、友人であり部下でもある少女に謝罪した。

(君よりも遥かに厄介な男が目の前にいたよ…)

 そうして『厄介な性格』という称号を今目の前にいる男に与えた。


        ○●○●○●


 クローバーの塔、その執務室にはいつものように上司に仕事を急かす部下の声が響く。
 最早、日常茶飯事のそれがナイトメアに効くはずもなく、山角の書類をペラペラと玩びながら、グレイの声を聞き流していた。
 そしてそれは叱り付けている本人にもすぐに気付かれて

「ナイトメア様…ちゃんと話しを聞いて下さ…」

 小言の内容が仕事をしない事から、話を聞かない事に変わり始めるかと思った瞬間。
 グレイは廊下に出て行ってしまった。

「んん?」

 小言から解放された事よりもそのおかしなタイミングが気になったナイトメアもまたドアの方まで近づく、すると

「アリス、そんなに持っては大変だろう?」
「グレイ!?どうしたの?またナイトメアが逃げだしたの?」

 向こう側に姿が見えないようにそうっと覗き見れば、廊下には両手に書類の束を抱えたアリスが居た。
 その進行方向から予想するに目的地はこの部屋。そしてあの書類も恐らくは自分に追加されるもの。
 それに関しても十分にげっそりとしてしまうが、それよりもナイトメアが気になったのは先ほどまで自分にぐちぐちと小言を言っていた男のものとは思えない甘い声色。

「こんな力仕事はしなくてもいいと言っているだろう?」
「大丈夫よ…少しでも塔の皆の役に立ちたいのよ。まだまだ出来る仕事は限られているから…」
「そんな事はない。君は仕事を覚えるのが早くて…後は俺が運ぶから、そろそろ休憩だろう?」
「ええ………グレイはまだ仕事中よね…」

 アリスの視線が手渡した書類の束に移る。ナイトメアに渡してくれと頼まれたこの書類…それはつまり彼の補佐をしているグレイの仕事も増える事を意味している。

「そうだな…予定では二時間帯後には休憩を取る事になっている…ただでさえ集中力の切れているナイトメア様がこれを片付けられるわけもないからな…その予定通りにしようと思う」

 そこで一旦言葉を区切り、グレイは身を屈めアリスの耳元に自分の顔を近づける。

「だから、俺の部屋で待っていてくれるか?」

 突然の言葉に声が出ないアリスはただコクコクと首を縦に振るだけ。その答えに満足したグレイは、「では、後で…」と言いその足を執務室に進める。
 見たこともない部下の態度にげんなりとしていたナイトメアは戻るのが遅れ、入り口でグレイと鉢合わせになってしまった。

「ナイトメア様?何をしているんですか?まさかまた逃げ出すおつもりですか?」
「いや…あんなピンクな空気漂う廊下に出られるほど、私はチャレンジャーではない…うう血を吐きそうだ…」
「もう少ししたら休憩にしますから…それまで、出来る限り片付けてください」

 口ではいつもの態度だが、かすかに見える心の声は先ほど同じく甘ったるいもの。
 元の職業柄のせいか、グレイの心はそう簡単には読めない。だが、ここ最近の…特にアリスが絡んだ時のグレイの思考は大分読みやすいものになっている。
 そういう時に限って、見た瞬間に血を吐きたくなるようなものばかりだが…。

(この微妙な感じも辛い…ううう早く休憩になってくれ…)


        ○●○●○●


 それとほぼ同時刻。
 休憩前に書類を届けた事を同僚に報告したアリスは、足早に廊下を歩いていた。
 自分の部屋でもナイトメアの執務室へ行く方向でもない事を誰も気付かれないように…会わないように速く、でも時々ゆっくりにもなる安定しない速度。

(こ、恋人なら…当然の事よね…彼の部屋で帰りを待つなんて)

 グレイの部屋に入ったのは数える程度。しかもその時にはいつも彼が一緒だった。
 先に一人で待っているなんて初めての事で、まだ部屋に着く前からアリスはどうしていいのか解らなくなっていた。

(そもそも、鍵って開いてるのかしら??ああむしろ開いてない方が外で待っていられて…でも、それを誰かに見られたら…!!)

 そんな事をグルグルと考えながら歩くアリス。幸いにはその間に誰にも会う事は無く、無事にグレイの部屋の前に着いた。
 そして何故か物音を立てないようにそうっとドアノブを回す。

「お、お邪魔します…」

 主の居ない部屋は、まるで初めて入る空間のよう。
 どこに座ればいいのか迷ったアリスの足は、本棚へと向かった。物語が綴られた書物よりも、資料として扱うものが多く並んだ本棚は、仕事熱心なグレイらしい。
 その中の一冊を試しに読んでみようかと手を伸ばしたのと同時に、ドアの開く音が聞こえた。

「っ!?」
「アリス…良かった。居てくれたんだな」
「グレイ?」

 取り出しかけた本を戻し、グレイに近づく。彼が先ほど言った休憩時間よりも一時間帯早い…なにかあったのか?と不安な気持ちはそのまま表情にも出ていた。

「ナイトメア様の集中力が思った以上に早く切れてな…仕方ないから、少し早めに切り上げたんだよ」
「そうだったの…お疲れ様」

 にっこりと笑いかけるアリスの髪を優しく撫でながら、グレイも笑顔で返す。
 最近の会合前の忙しさのせいでろくに一緒に過ごせていない二人。アリスは会合の準備を、グレイはそれまでにナイトメアの溜め込んだ仕事を片付けさせる為と請け負っている仕事も違う。

「準備はどうだ?なにか困った事は無かったか?」
「大丈夫よ。皆丁寧に教えてくれるし…それにもう何度か経験もしてるから」
「そうだな…君は、飲み込みが早いから…それが少しだけ残念に感じてしまうよ」
「残念?」

 アリスの淹れたコーヒーを一口飲みながら言ったその一言に、驚きを隠せずにアリスはジッとグレイを見つめてしまう。

「君がいつまでも不慣れなままなら、俺が色々と世話を焼けるのに…と思ってな」
「っ!?…それじゃあグレイに迷惑がかかるわ。ただでさえグレイはナイトメアっていう大変な人が傍にいるんだから」
「だが、君が俺の予想以上の早さで仕事を覚えてしまうから、こうやってろくに会える時間が無くなっているのも事実だ…」

 また一口コーヒーを飲みながら発せられたその言葉は、どこか拗ねているにも聞こえて…グレイ自身も、自分で言った言葉に対して照れているのかすぐに訂正の言葉が出た。

「大人げない事を言ったな…忘れてくれ。俺は、君と一緒に仕事をしている部下達が羨ましいようだ…堂々と君の世話を焼ける彼らが」
「世話なんて…そんなに迷惑かけてないつもりよ…」
「ああ、そういう意味で言ったんじゃないよ。君と一緒に仕事が出来るのが羨ましいという意味だ」

 さっきまでの見たことの無い雰囲気から一転して、目の前にいるのはいつもの大人なグレイ。

「俺は駄目だな…君の事となると少しおかしくなるようだ」

 そう言いながら手招きをし、向かい合わせに座っていたアリスを隣に座らせる。

「ナイトメア様のことすら放り出して、君と一緒に居たいと思ってしまうんだ」

 横に座ったことで近くなった距離は、彼に抱き締められる事で更に近くなる。
 ドキドキと聞こえてしまうんじゃないかと思うくらいに鳴る心臓の音を誤魔化すようにアリスは可愛くない答えをしてしまう。

「そんなのグレイらしくないわ」
「そうだな…君と離れると俺は駄目になってしまいそうだ…だから、俺の傍にずっと居てくれるか?アリス」
「………うん」

 過保護な友人であり同僚。そして恋人。その境目が自然過ぎて、それに『恋人ごっこ』としてはあまりにも甘い言葉にアリスはただ頷くだけで精一杯。
 ついこの間、自分もちゃんとそれらしく振舞おうと決めたばかりなのに…いざ本人を目の前にするとこんな決意など粉々に砕けてしまった。


        ○●○●○●


 久しぶりにとれた二人きりの時間は簡単に過ぎていった。先に仕事に戻ったのはグレイ。アリスの方はもう少し時間があるので自室で休むといって別れた。

「さぁナイトメア様、遅れを取り戻してくださいね!」

 口調はキビキビとしてキリッとしているが、その内部から漏れる思考は相変わらずの甘さで…休んだばかりだというのにナイトメアは早くもぐったりとしてしまう。

「ナイトメア様、シャキっとしてください!」
「だったらその甘すぎる思考を止めろ!!お、お前は仕事中に何を考えているんだ!何を!!」
「何ってアリスの事ですよ」

 それ以外に何がありますか?といった感じにはっきりと言い切られてはそれ以上突っ込みようがない。

「お前の方が、厄介な性格だったな…」
「何の話ですか?」

 以前にアリスとナイトメアがした会話を知るはずもないグレイに、その言葉の意味が解るはずもない。

 グレイの態度が本気からくるものだと全く考えず、彼を『子供の我侭』に付き合ってくれる大人の男性だと思っているアリス。

(これのどこが大人だというんだ?)

 ただの仕事仲間…自分にとっても部下である彼らにまで嫉妬しているような男が。
 大人げない方法でアリスが他の男のもとに行くのを引き止めるような男が。
 そしてアリス自身も気付かないうちに、彼女の所有権を主張しているような男が。

(以前の言葉は撤回しよう…君は、厄介な男に捕まった女の子だ)

 例えるなら、甘ったるい砂糖菓子の鎖…その鎖が自分の周りにある事に気づいた時にはもう遅く、きっと逃れる事はできない。

(いや、君がこの世界に留まる事を望んでいるんだがね…)

 その相手がこの男でいいのだろうか?今更な心配をするナイトメアの思考は誰に読まれる事なく、彼の中に留まったまま。
 不定期に…でも確実に過ぎる時間。ナイトメアの心配をよそに、二人の関係はもっと深まっていく。

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