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なまえを、よんで?



 グレイ×アリス
 6/24のラブコレで配布しましたペーパーです。
 昔(風)×アリス…設定としては
 ・ハートとクローバーの混ざった国(エイプリルシーズンではない)
 ・グレイは、ナイトメアの部下に成り立ての頃
 ・アリスはハートの城滞在
 となっています。





「こんにちは、グレイ」
 
 夕方の時間帯、クローバーの塔付近の街中で見知った顔を見かけたアリスは笑顔で駆け寄る。
 それに対して相手は、愛想なんて欠片もない表情で振り返った。

「なんだ?あんたか余所者の」
「私の名前はアリスって何回も言ってるでしょう?」
「あんたが余所者には違いないだろ?」
 
 今アリスがいる領土・クローバーの塔の住人で、領主ナイトメアの部下…世話係…でもあるグレイ=リングマーク。

(ああ、エースの鍛錬の相手…でもあったわね)
 
 ハートの城を滞在地にしているアリスにとって、彼はエースの知り合いという認識だが、グレイに聞けば全否定されてしまうだろう。
 それ以上の彼のプロフィールは知らない。
 友人というにはまだ浅い付き合いだが、こうやって挨拶をし、話をするくらいには親しい…けれど彼はいつまでたってもアリスの事を名前で呼ばない。
 ナイトメアを通して紹介された時から、グレイはアリスの事を『余所者』と呼び続ける。
 アリスがいくら名前で呼んで欲しいと言っても、それはグレイには届かない。

「それに俺には、他人を名前で呼ぶ習慣がないんだよ」

 そういえば、彼は上司のナイトメアの事すら『芋虫』と呼んでいる。
 エースの事は『騎士』…他の役持ち達と一緒の場面を見た事はないが、彼等の事も恐らくは二つ名で呼んでいるのだろう。
 そうなると、二つ名を持たない人達の事はなんと呼んでいるのかと気になるし、アリスには『余所者』という別名と言えるものがあるだけマシなのか?と思ってしまう。
 しかしその反面で、グレイに名前で呼んで貰いたいと思う気持ちがあるのも確か。
 彼以外でもアリスの事を『余所者』と呼ぶ人間は確かにいる。
 それに関してあまり良い気分にはならないが、わざわざ訂正する事はない。

(でもグレイには…)

 今はまだ顔見知り程度。
 彼の纏う雰囲気は、普段だったらきっと自分から近寄らないだろう…一言で言うならば危険な感じ。
 でもアリスはもっとグレイの事を知りたいと思った。話しをしていけば友人になれるかもしれない。
 その第一歩として名前で呼び合うのは重要な事だ。
 自分よりも付き合いの長いであろうナイトメアの事すら名前で呼ばないのだから、無理な事かもしれないけれど…諦めるつもりはない。

(けど、これ以上頼んだって無理よね…)

 頼んでも駄目ならば今度は…

「用が無いなら俺は行くぞ?」
「あなたが私の事を名前で呼んでくれないなら、今度からトカゲさんって呼ぶわね?」

 グレイがアリスの前から立ち去ろうと躰を動かしたのと、アリスが言ったのはほぼ同時だった。
 一瞬だけ逸れた視線はまたアリスに向けられる。その表情はアリスの予想以上に不機嫌そうなものだった。

「その呼び方はやめろ」
「だったら私の事をちゃんと名前で呼んでくれる?」

 グレイがここまで不機嫌になる理由は解っている。『トカゲさん』は、エースが彼を呼ぶ時の愛称だ。
 ここまで嫌がるとは予想していなかったが、交換条件としては効き目がありそうだ。
 しかしグレイはこれ以上アリスと話す気がないのか、再び躰の向きを変え、そのまま歩き出してしまった。

「え…待って!!」

 思わずアリスはグレイを追いかけた。しかし歩幅が違うせいでなかなか追いつくことが出来ない。

「待って!グレイ!!」
 
とっさに彼の名前を叫ぶ。するとグレイはその場に立ち止まり、アリスの方へ振り返る。

「名前で呼ばないんじゃなかったのか?」

 そう言った彼はニヤリと笑い、企み事が成功して嬉しそうな表情をしていた。

「よ、呼んでないわ!!トカゲさんの気のせいでしょう?」
「そうだったか?」

 触れられる距離までアリスが近づくのを待っていたグレイは、その頭をポンポンと叩く。

「まぁ気が向いたら呼んでやるよ」
「………」

 今まで見てきた表情の中でも一番穏やかそうな笑顔…アリスはそれに見とれてしまい、彼に返す言葉が出てこなかった。

「じゃあ俺はもう行くからな?あんたも気をつけて帰れよ………アリス」

 消え入りそうなほどに小さな声で最後に彼が言ったのは確かに自分の名前…。
 けれどアリスがそれに気付き、グレイの名前を呼び引きとめようとした時にはまた彼との距離は離れていた。

「…呼んでくれた…」

 ただそれだけの事で嬉しくなる。少しだけ彼との距離が縮まった気がする。
 もしかしたら今度会った時にはまた『余所者』呼びに戻っているかもしれない。
 それでもまたいつか呼んでくれるかもしれないから。そんな小さな楽しみを抱えながら、アリスは城へ戻っていく。
 また次に彼と会える時間帯になるのを楽しみにしながら。

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