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Blau und Tranen~再び森で出逢うまで~



 グレイ×アリス
 赤頭巾パロの続きです。
 予定では3話ほどで完結……気長にお待ちください





side Gray

早くここから離れないと。
 彼はその一心で、ズキズキと痛む躰を奮い立たせ足を前に動かす。
 気休め程度にわき腹の傷口を抑えていた手はもう血まみれになっている。

「くそ……もう少し、後少しだけでも」

 いつもよりも遥かに遅い速度で、それでも彼は必死に歩く。
 ただ離れる為に…あの青い頭巾の少女・アリスから少しでも離れる為に。
 この血の匂いで、この周辺に未だに残っているだろう狼が出てくるかもしれない。
 その時にアリスの傍にいては、彼女にまで危険が及ぶ。
 それだけは、なんとしてでも避けたかった。
 傷口を抑えているのとは逆のきつく握り締めた手を開く。そこにはクシャクシャになったハンカチ。
 猟師に撃たれ、対峙している時にアリスが血を止める為に使っていたもの。
 真っ白だったはずのハンカチはすでに血で汚れていた。

『私は……貴方が好きです…』

 告白をした相手が、狼と人間の間に生まれた存在とも知らずに、少女は自らの想いを告げた。

 最初は偶然。微かに感じた狼の気配を追っていくと、今まさに襲われようとしている少女がいた。
 そこまで強い狼ではなかったのでナイフを一本投げつけただけで逃げて行った。
 しかしそいつがすぐ仲間を連れて戻ってくる可能性もある。
 恐怖から微かに震えている少女を放っておけなかったグレイは、彼女が森から出て行くまで見送る事にした。
 自分の住む町でも言われているが此処は『一人で入るな』と言われている森だ。
 彼女もそれは知っていたがこれは仕事の一環で、これからも来ないといけないと気丈に言う。そんなアリスをグレイは護衛する事にした。
 それは、人間と関わる事を避けていた男が起こした気紛れ。

 そして気紛れはもう一つあった。
 アリスと会わない日でもグレイは森に入り狼達を片付けていた。そうすれば、彼女は自由に森を行き来できるから。
 こんな『化け物』の自分が傍で守るよりもその方が良いだろうと。
 だけど無事でいるかどうか気になってしまい様子を見に行ってしまった。
 少しでも彼女が怖がる事の無い様な格好・口調まで変えて。
 そのたびに見せるアリスの笑顔に、グレイは惹かれていった。
 だから忘れていた……自分が人間ではない事に。
 彼女に手を弾かれた瞬間、脳裏に過ぎったのは過去の記憶。もう忘れたはずだった、迫害されていた時の記憶。
 いまでは魔法の力で狼としての自分を消しているが、完全な人間には永遠になれない事を忘れていた。

「これは、その天罰か……」

 彼女の知り合いである猟師に撃たれた。
 痛みにより隠し切れなくなった耳と尾を見て彼女はカタカタと手を震わせながらもこの傷口を押さえてくれた。
 そんなアリスの気持ちを、踏みにじったのは自分だ。

『誰が好きだと言った?』
『俺は別にお前が好きで構っていたわけじゃない。俺にとってのお前は獲物の一つだ』

 よくもまあ、あんなにすらすらと嘘が言えたと感心する。
 好きで仕方ないくせに……。

「くっ……」

 その瞬間、視界が歪みグレイはバタリと倒れこんだ。

「ああ、ここまでか?」

 自嘲気味に呟き地面に座り込んだ。そして、くしゃくしゃで血まみれのハンカチを見つめる。

「アリス……」

 瞼を閉じると同時に彼の口から零れたのは、一度も呼べなかった愛しい少女の名前だった。


        ○●○●○●

side Alice

 あの日から、アリスの日常に変化は無かった。
 方向音痴の幼馴染はあのまま町に帰ってくる事は無かったため、アリスは何もなかったフリをし続けた。
 そして今日も彼女は森に入る。泣きそうになる気持ちを必死に抑え込んで。

「今日もご苦労様、アリス」
「こんにちはナイトメア」
「まだ、作業が終わっていないんだ。すまないが、待っていてくれるか?」

 いつもと変わらないやり取り。一つの異変と言えば、こうやって待つ時の場所がナイトメアの家の中ではなく、外になったという点だろうか。
 彼曰く『薬の調合中は危ないから』らしい。珈琲を淹れて貰って、それを外に窓際に置かれた椅子に座ってのんびりと待つ。
 狼のいなくなった森は平和そのもので、アリスはこの時間を楽しんでいた。
 木漏れ日の暖かさと、風に揺れてカサカサと鳴る葉っぱの音を聞きながらの穏やかな午後の一時。
 こんな風に過ごしていれば、いつかは彼の事を忘れられるだろう……そう思っていた。

「やあ! アリス、お疲れ様~」

 それは、バイトを終えて店を出てすぐに起きた。
 聞き覚えのある声のした方を振り向けば、そこにいたのは赤尽くめの男。
 アリスにとって一番会いたくない存在。

「エース……なにをしているの?」

 なんとか作り笑顔で問いかければ、エースは屈託の無い爽やかな笑顔でこう返してきた。

「アリスを待ってたんだよ! 家まで送ってあげようと思ってさ」
「……」

 ツッコミどころは何個もある。
 一つに、エースが誰かを家まで送る事は不可能だろうという点。
 二つに、どうしてアリスのバイト先を知っていたのかという点。
 そして三つ目が最大の問題点。

「よく、私の前に来れたわね?」
「ん? ああなんとか着けたんだよ~俺としては最短記録だと思うぜ!」
「そういう意味じゃない事ぐらい解ってるわよね?」

 キッと睨みつけても、エースは全く気にせずニコニコと笑う。
 そんな彼を無視してアリスはスタスタと自宅への道を急ぐ。

「あ、待ってくれよ~。俺、アリスに聞きたいことがあるんだよ!」
「何!?」
「あの狼さん、元気?」

 一応話は聞くが、立ち止まるつもりはなかった……なかったはずなのに。

「おおかみ……?」
「そうだよ~元気? それとも死んじゃった?」
「っ!? し、知らないわ!!」
「う~ん。そっかぁ……もし元気だったら謝った方が良いかな~とは思ってたんだけどな」
「謝る……ってなにを?」

 気が付けば立ち止まり、エースに詰め寄っていた。
 彼は自分に近づいてきたアリスにニコリと微笑み『告白』をした。

「あの狼さんってもしかしたら人間だったのかなぁて」
「意味が解らないわ。あなたあの時言ったじゃない、グ……彼は人狼だって」
「うん。言ったね……でも、その中でも細かく分類があってさ。あの狼さんは人の血が濃いタイプだったのかもしれない」

 あの時のエースの狙いとしては、傷を負わせ術がとけて本来の姿を見せていたところを始末する……そのつもりだった。
 しかし何発撃ち込んでも彼は人型を保っていた。おかしい……もしかしたらと気付き、アリスに確認しようと戻ってきたらしい。

「……狼じゃないの?」
「狼の血は入ってる。でもそれよりも人間の血の方が濃いんだよ。そういうタイプは人間を襲わないはず……なんだよな。だから悪い事をしたから謝りたいんだけど」

 「彼が何処に住んでいるか知らないか?」その台詞がアリスの耳に入る事は無かった。
 気が付けばアリスはエースを放って走り出していた。その行き先は森の中。


        ○●○●○●


「はあ、はあ……」

 走り続けているうちに陽は傾き、空はオレンジと紫が半々になっている。
 いくら平和になった森とはいえ、夜は危険……頭ではちゃんと解っているがアリスの足は森の奥へと進む。
 そして、再び足を止めた目の前にあるのはナイトメアの家だった。
 呼び鈴を鳴らすと、数時間前に見た顔が出迎えてくれた。初めて目にする驚いた表情で。

「ど、どうしたんだ? なにか忘れ物か?」
「ナイトメア……」

 「グレイを知らない?」そう聞くために開きかけた口はそのまま固まる。
 無我夢中で此処まで走った……でもどうして此処なんだろう。彼がグレイの事を知るわけないのに。
 隣町まで走る事も出来たはずなのに、どうして……?

「アリス? どうしたんだ……もしかして、具合が悪いのか?」

 心配そうにナイトメアの手がアリスの肩に触れようとしたのと、それはほぼ同時だった。

「何してるんだ?」
「ん? ああ、お帰り」

 誰かの声と、それに答えるナイトメアの声。
 振り返ればいい、誰か確かめる為に振り返れば……頭では解っている事なのにすぐには躰が動かなかった。
 だってアリスの背後から聞こえた声は……。

「グレ……イ?」

 彼の名を呟きながら恐る恐る振り返る。
 そこにいたのは、アリスが会いたくて仕方のなかった人。

「っ!? なんで君がいるんだ!?」
「グレイ!!」

 彼に触れられる距離まで近づき、アリスはその黒いシャツに顔を埋め何度も名前を呼んだ。
 どうして、なにがあったの?
 聞きたいことはいくつもある。エースの言っていた事も確認したい。
 けれどそれよりも今のアリスは彼と再び逢えた事が嬉しくて。この手を離したら消えてしまいそうな気がして。
 ただグレイの名前しか言えなかった。

「グレイ、グレイ……」
「……」

 そんなアリスを困惑した表情で見下ろしながら、何度も抱きしめようと腕を伸ばしかけては躊躇うグレイに彼女が気付けるはずもなかった。

 こうして、青い頭巾の少女と狼は再び森で出逢った。
 今度こそ……幸せな結末を目指して。

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今晩は♪良い話でした(涙)

続きありがとうございます(>_<)

凄く良い話でした////
良かったねアリス(TUT)グレイも良かったな!

次は幸せな結末へと歩いていける事を信じてるよ!!
君たちは幸せになるべきだ!

コンチクショウ!
種族が違えど、愛し合っているならなんでも良いじゃないか!
深いことなんか気にせずに「好きだ」って行っちまえ~~

って、思っちゃったんで書いてみました(笑)

Re: 待ってましたああああ!!

 ナトリウム侍 様
お待たせいたしました<m(__)m>
両片思いな焦れ焦れとした雰囲気も好きですが、やはりラブラブなのが良いですよねぇ。
ゆっくりになる可能性は高いですが、ちゃんと恋人同士にさせます!それだけは確かなので!
また見に来てやってください。

Re: 今晩は♪良い話でした(涙)

 遥那 様
コメントありがとうございます。
よ、漸く書けました( ̄Д ̄;;
ここからもう告白して、ラブラブな恋人同士になるために進むだけなので!
もう少しだけお待ちください。

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・乙女ゲー
・文字書き

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